マーメイド
二重になれば自分の好きな顔になれると思った。二重になった今、自分の顔の欠点は二重だけじゃなかったことに気がついた。
二重じゃない重たい一重の目が大嫌いだった。
だからずっとアイプチで誤魔化してきた。常習でないにしろ中学1年からアイプチ暦は長かった。その間にかなり上手くなったと思う。しかし特に水場や夏は維持が難しい上に、作るのに時間がかかる。だから成人するの待ってすぐに二重にしたのだ。アイプチでもわざと自然さを出すために奥二重に作っていたので、広めの平行めではなくお母さんに似た少し奥二重めな二重にした。
結果としていつもアイプチをしていたものだから、誰も気がつかなかった。一人友達が気づいてくれたが二重にしてから結構経った後だった。何万もかけてるのに誰も気づきやしない。
母方の親戚に会う機会があってこう言われた。
「本当に(母の名前)に似てきて、目なんか本当そっくり」
帰りの車で小一時間くらい母と笑った。
母は二重することにたいして肯定的だった。自分の目に似たようにするからなのかもしれないが。だけどする前には絶対に言いたくなかった。事実、二重にするのは保護者の了承がいらない成人を迎えてからにしたし、なんの相談もしなかった。ちなみに妹は了承をもらってでも高校を卒業したらすぐやりたいらしい。私もそれをオススメしている。
否定派の意見として"親からもらった顔"なんていう言葉がある。別に親と似ているから自分の顔が嫌いなわけではない。もしできるのならば親からの顔のパーツをとって自分の顔を作れるのならばいいなとさえ思う。
例えば、私なら父の口と鼻、母の輪郭と目がもらいたかった。出来上がりの結果としては父の輪郭と目と口、母の鼻と色白さをもらう形になったのだが。
まぁこれで目は母似にしたので造形だけで言ったら父の口と輪郭、母の鼻と目という半々(なんの?)になったわけだが、今まで通り不細工である。
何が言いたいかというと、現状で満足はできていないということだ。だからと言ってサイボーグみたいになりたいとは思わないし、正直言って金銭的な面でわたしにはできない。全面いじるのはお金がいくらあっても足りない。まぁ贅沢をいうと素の顔を生かしつつ綺麗になりたいのだ。
何もしなくてもブスと言われる。何とは言わないが何かをしても作り物と言われる。
作り物のかわいさだっていいじゃないか。
それでも可愛くなりたいのだ。
あと、"自分の子供が生まれた時"などと言ってくるものもいるが、まず前提として不細工なままで子孫が残せる段階に行けないじゃないか。子供ができる前にお家は滅びるよ。
マーメイドはおこがましすぎる気もする。
もっと謙虚に生きようぜ。
黒澤まどか 「整形マーメイド」